
5月になると、和菓子屋さんの店頭にずらりと並びはじめる柏餅。
独特の葉っぱの香り、もっちりとした口当たり、そしてほどよい甘さのあんこ。毎年「あ、今年も食べたな」とほっとするような、季節の定番です。
でも、柏餅ってそもそもどんなお菓子なのでしょう。ちょっとその歴史や種類をのぞいてみると、なかなか味わい深いものがあります。
柏餅が生まれたのは、江戸時代のこと
柏餅が端午の節句のお菓子として広まったのは、江戸時代の中期のこと。
きっかけは、柏の木の不思議な特性にありました。柏の葉は、新しい芽が出るまで古い葉が落ちないのです。
新芽を子ども、古い葉を親に見立てて、「家系が絶えない」「子孫繁栄」の縁起ものとして、武士の間で大切にされるようになりました。
そのまま江戸の町へと広がり、端午の節句には欠かせない一品になっていったのです。
ちなみに「柏(かしわ)」という言葉、もともとは「炊葉(かしきは)」が語源だそうで、昔は食べ物を盛るための木の葉全般をこう呼んでいたとか。
葉っぱが食器代わりだったというのも、なんだか豊かな時代の話ですよね。
とはいえ、柏の葉っぱや柏の木、実際にはほとんど見たことがないんですよね。

柏の葉っぱを目にするのも、柏餅が出回る時くらい。
柏の木ってどこに生えてるんでしょう?
最初の柏餅は、しょっぱかった?
少し意外なのが、登場した当時の柏餅の中身です。
1718年(享保3年)に刊行された日本最初の菓子レシピ帳によると、当時の餡は塩餡だったと記されています。
砂糖がまだ大変高価だった時代のこと。甘いあんこではなく、小豆に塩を加えたしょっぱい餡が使われていたのです。
甘い小豆餡が当たり前になっていくのは、国産砂糖の流通が進んだ江戸後期のこと。今わたしたちが口にしている、あの甘さはわりと新しい味なのかもしれません。
塩あんの柏餅、ちょっと食べてみたいですね。
東は柏餅、西はちまき
端午の節句の食べ物といえば、柏餅だけではありません。
西日本では、ちまきを食べる文化が根強く残っています。ちまきは平安時代に中国から伝わったもので、かつては全国で食べられていました。
その後、江戸時代に柏餅が江戸を中心に広まり、「東は柏餅、西はちまき」という棲み分けができていきました。
どちらも、子どもの健やかな成長を願う気持ちが込められているのは、同じです。
柏餅の種類いろいろ
ひとことに柏餅といっても、実はバリエーションが豊かです。
あんこの種類は、こしあん・つぶあん・みそあんの3種類が代表的。
こしあんとつぶあんはおなじみですが、みそあんは東日本を中心に親しまれています。
初めて食べる方には驚きの味かもしれませんが、これが不思議なほどお餅によく合うのです。

私は、みそあんが大好きです!
柏餅を買うなら、絶対みそ!と決めているので、みそあんがないときは、少しがっかりします。
生地の色も、お店によってさまざまです。白い生地にはこしあん、よもぎの緑の生地にはつぶあん、ピンクの生地にはみそあん、という組み合わせが多く、色で中身を見分けられるようになっています。

包んでいる葉っぱも、実は地域によって違います。関東ではおなじみのカシワの葉ですが、関西ではカシワの木が少なかったため、サルトリイバラの葉が使われてきました。
今でも西日本では、こちらの葉を使う和菓子屋さんが少なくありません。
あの葉っぱの香り、実は効能があった
柏餅を手にしたとき、まず感じるのはあの葉っぱの香りではないでしょうか。
たしかに、独特な香り。
柏の葉には「オイゲノール」という香り成分が含まれており、抗菌・防腐の効果があります。
冷蔵技術のなかった時代、お餅を包んで保存するのにぴったりだったのですね。
さらにこの成分、森の中で感じる”あの気持ちよさ”と同じ働きをするとも言われています。柏餅を食べながら、知らず知らずのうちに癒されていたのかもしれません。
